ドクター日浅の”健康雑話” 其の十八
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ドクター日浅の”健康雑話” 其の十八
2023.07.15
海南病院のホームページを訪ねてくださりありがとうございます。
私が海南病院に勤務するようになって4年が過ぎました。月曜日の外来にはたくさんの方が受診してくださるようになり、医者冥利に尽きると感謝しています。
これからも海陽町民をはじめ、南部地域の方々に少しでも健康面でお役に立てればと願っています。その一環として、日々の診療の中で経験したことや感じたことを雑談的に書いてみたいと思います。気楽に読んでいただければ幸いです。
今年の5月の連休を利用したシンガポール訪問は3年半ぶりの海外旅行だった。それまで毎年2~3度海外で息抜きすることは私の活動の源でもあったので、今回の旅行は待ちわびていたものだった。もちろんコロナ感染予防には万全を期したつもりであった。旅行は期待通り楽しく充実したものだった。ところが帰国3日後から身体の違和感を覚え、4日目には高熱と咽頭痛、咳が止まらなくなった。コーヒーも味が全く変わり不味くなった。コロナに感染したと思った。約1週間の自宅療養で回復したが、その間に考えたことをお話しする。
第一に、コロナ感染は個人がいかに気を付けていても完全に予防することはできないことである。今回の旅行でも人が集まる観光スポットには行かず、移動も公共交通機関でなく専用の車を使用した。しかし、海外ではマスクを着けている人はほぼ皆無であり、マスク着用は私をはじめ明らかに日本人と思しきごく少数の人たちのみであった。極めつけは帰国時の空港待合室であった。使用飛行機が変更になり、待合室が広々としたところから韓国便や中国便と共同の室となった。大変な混雑のうえ、マスクなしで大声で喋る人達と約1時間一緒であった。これはまずいと思ったが、案の定ここで感染したと思う。
第二は、市販のコロナ感染診断キットは不正確なことである。発症2日目に近所に市販キットを販売している薬局があることを知りセルフチェックした。結果は明らかな陰性であった。コロナ感染ではなかったのかと一時安堵した。しかし、翌日も高熱が続き、通常の風邪とは明らかに異なる全身倦怠感や咽頭痛、咳、味覚異常があったため、勤務先の碩心館病院で鼻汁採取による抗原検査を受けた。ほんの十秒もたたないうちに陽性の赤い帯が出現した。検体採取の日時が違うことや唾液と鼻汁で異なること、効能書きに陰性でも完全な感染否定にはならないことが記載されていたことを勘案しても納得しがたい印象を持った。
第三は、治療薬であるラゲプリオは思いのほか効くと思ったことである。私は高齢で心疾患の持病があり、発症3日目であったことからこの薬を処方してもらった。自分なりに少し特別な飲み方をしたが、翌日からは解熱が始まり、他の症状が徐々に軽減した。医師としても“この薬は効く”との実感があった。
最近、私のコロナ罹患を知った患者さんから「先生、患者の不安な気持ちがよくわかったでしょう」と聞かれた。私は何回か結構大きな病気になり、患者の立場になったことがある。その度にいつも医師として最悪のことを心配した。その際、担当医師や看護師さんの励ましが“何よりの薬”になった。今回も肺炎等の合併症を起こさないだろうか、味覚障害などが後遺症として残らないだろうか等々の不安はあったが、診察医の「おかしいと思ったら受診してください。いつでも診ます」の一言が大きな支えになった。
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