ドクター日浅の“健康雑話” 其の二

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ドクター日浅の“健康雑話” 其の二

2022.03.15

海南病院のホームページを訪ねて下さりありがとうございます。

私が海南病院に勤務するようになって3年近く経ちます。月曜日の外来にはたくさんの方が受診して下さるようになり、医者冥利に尽きると感謝しています。

これからも海陽町民を始めとした南部地域の方々に少しでも健康面でお役に立てればと願っています。その一環として、日々の診療の中で経験したことや感じたことを雑談的に書いてみたいと思います。気楽に読んで戴ければ幸いです。

 

其の二  お尻から太ももの後ろがしびれるので整形外科を受診した

神経痛ではなく動脈硬化による血流不足だった

 

60歳後半の男性が外来を受診しました。100m位歩くと右のお尻から太股の後ろ側が痛だるくしびれる、腰から来ているかと整形外科を受診したが異常がないと云われたとのことです。よく話を聞くと、そのしびれは10分位休むとウソのように良くなり、歩き始めるとまた100m位でしびれるそうです。右側の足首、膝裏や太股の脈が微弱にしか触れないことから、足の付け根の動脈(腸骨動脈)が狭くなっていると診断しました。狭い部分を拡げる治療で症状は全くなくなりました。

この患者さんのように、少し歩くと足や臀部が痛くなったりしびれたりして歩けなくなり、少し休むとまた歩けるようになる症状を“間欠性跛行(かんけつせいはこう)”といいます。原因となる病気が2つあります。1つは腰部脊椎管狭窄症という病気です。脊椎の中を走っている脊椎管という神経の通り道が加齢のため腰の部分で圧迫され狭くなるために生じます。間欠性跛行を訴える患者さんの約3/4がこの病気が原因です。

残りの患者さんの原因は、この男性の病名でもある閉塞性動脈硬化症です。この病気は心筋梗塞や脳梗塞等と同様に動脈硬化が原因で生じます。このため高齢者や男性、糖尿病、高血圧症、喫煙等の動脈硬化の危険因子を多く保有している方に高頻度にみられます。

専門の医師が足の脈を触れることにより容易に診断できます。このため私は診察する全ての患者さんの足の脈を触診し、この病気の有無を確かめています。歩くことが少ない方は間欠性跛行の症状がないこともあるので、この診察は欠かせません。疑いがある方は脈波検査で両手、両足の血圧を同時に測定します。足の動脈に狭窄があると血圧が低くなり、診断と同時に重症度も分かります。さらに血管エコー検査を加えることで狭窄の部位や程度、治療の方法等が判明します。いずれの検査も苦痛を伴わないものであり当院で施行できます。

治療は動脈の狭い部分を風船で拡げ、ステントを留置することが一般的で、ごく短期間の入院ですみ高い成功率です。ただこの病気の最大の問題点は、生命予後が非常に悪いことです。5年生存率は大腸がんと同等の65%程度といわれています。その理由は次のように考えられています。動脈硬化は全身の血管に生じ、心臓→脳→腎臓→腹部→足の順に発症しやすいのです。足の血管が狭くなった時には、発症しやすい心臓や脳の動脈に既に病気が存在し、心筋梗塞や脳梗塞で生命を失うことが多いのです。このため、足の触診で診断できる閉塞性動脈硬化症を早期に発見し、生命を左右しやすい心臓や脳に病気を併発していないか調べることが大事です。

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