ドクター日浅の“健康雑話” 其の三

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ドクター日浅の“健康雑話” 其の三

2022.04.14

海南病院のホームページを訪ねて下さりありがとうございます。

私が海南病院に勤務するようになって3年近く経ちます。月曜日の外来にはたくさんの方が受診して下さるようになり、医者冥利に尽きると感謝しています。

これからも海陽町民を始めとした南部地域の方々に少しでも健康面でお役に立てればと願っています。その一環として、日々の診療の中で経験したことや感じたことを雑談的に書いてみたいと思います。気楽に読んで戴ければ幸いです。

其の三  心臓専門医の急性心筋梗塞体験記(上)

 

 私にとってその出来事は青天の霹靂(へきれき)であった。3月8日、平日であったが休養日であったので、郊外のレストランで少々豪華な昼食を楽しんだ。元来アルコールは強くない質だがワインを多めに嗜んだ。食事の終わりごろ身に着けているアップルウォッチの警報音が鳴ったのでチェックしてみると、脈拍数が設定値上限の110/分を超えていた。飲み過ぎた、食べ過ぎたと思った。食事を終えて店外に出た途端、左肩甲骨に何とも言えない強いしびれ感を伴った痛みを覚えた。
 以前頚椎症を患ったことがあるので、首でも捻ったのかと思った。それにしては息苦しい。急いで自宅に帰り湿布薬を貼って様子を見た。痛みは最初のころに比べて5/10位に和らいでいたが依然として不愉快な感覚が続いた。急性心筋梗塞症、肺動脈塞栓症、大動脈解離等の命にかかわる病気の可能性もいろいろ考えた。このような病気にはなりたくないとの思いからか否定的な考えが先行した。急性心筋梗塞症に関しては、この正月に香川県の琴平宮の785段の階段を昇っても何ともなかった。アップルウォッチの心電図波形をみても、心筋梗塞の特徴であるST上昇や明らかなST低下はなかった。もともとこの心電図は心房細動等の不整脈感知に考案されたもので、心筋梗塞の探知には不向きなものであるが。
 喫煙はしない、高血圧はない、糖尿病なし、肥満なし、悪玉コレステロールは少し高い位で冠動脈危険因子は殆どない。ただ、父親が今の自分と同じ歳に心筋梗塞で亡くなっていた。タイプA性格(何ごとも他人に任せられない、負けず嫌い、せっかち等)でストレスは日々溜りやすかったが。
肺動脈塞栓症については、酒の酔いが醒めるとともに脈拍が70/分台に戻っていたので、この病気の特徴である頻脈に合致しないことから違うだろう。大動脈解離は症状としては疑うが、高血圧の病歴がないため多分違うだろう。やはり筋肉痛か神経痛かなぁと楽観的に考えた。
 この時刻は肩甲骨に痛みが生じてから1.5時間くらい経っていた。その頃から左側の下顎の歯茎が痛だるく感じるようになった。狭心症の患者さんが顎や歯茎の痛みを訴えることはよくあることで「これはヤバイ」と思った。研修医や患者さんに“急性心筋梗塞症を少しでも疑った際には、面倒がらずに心電図を記録することが鉄則”といつも言っている手前心電図だけは撮っておこうと考え、勤務先の一つである碩心館病院へ急いだ。
 終業間際であり、勤務外である私の突然の訪問に検査技師さんは驚いていたが二つ返事で電極をつけてくれた。しかし、いつもは「ハイ終わりました」と明るい声が返ってくるのに「先生、……どうしましょう」と沈んだ声とともに心電図が渡された。胸部誘導に急性心筋梗塞ごく早期のT波先鋭化の変化があった。

 

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其の一 飲酒後コタツで一瞬気を失った其の二 お尻から太ももの後ろがしびれるので整形外科を受診した