ドクター日浅の“健康雑話” 其の十三

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ドクター日浅の“健康雑話” 其の十三

2023.02.15

 海南病院のホームページを訪ねてくださりありがとうございます。
 私が海南病院に勤務するようになって4年を迎えようとしています。月曜日の外来にはたくさんの方が受診してくださるようになり、医者冥利に尽きると感謝しています。
 これからも海陽町民をはじめ、南部地域の方々に少しでも健康面でお役に立てればと願っています。その一環として、日々の診療の中で経験したことや感じたことを雑談的に書いてみたいと思います。気楽に読んでいただければ幸いです。

其の十三 一杯のラーメンが心不全を引き起こす

~心臓専門医からの忠告~

 一人暮らしをしている84歳のH男さんは慢性心房細動、高血圧症等の持病を持ち心不全で入退院を繰り返していました。夜間急に息苦しくなり近所のかかりつけの医院から徳島赤十字病院に緊急搬送されました。約2週間の入院治療で症状もすっかり良くなり、心不全に対する教育とリハビリを目的に私が勤めている碩心館病院に転院してきました。

 碩心館病院には数名の心不全療養指導士が在籍し、チームを組んで心不全の患者さんの指導や相談を担当し効果をあげています。メンバーの一人である栄養士さんが耳寄りな情報をもたらしました。H男さんには退院すると楽しみがあるそうです。それは少量の焼酎の晩酌と一杯のカップ麺の夕食だそうです。今回の心不全もこうしたことを1週間続けた後に生じたそうです。チームで相談し、H男さんに次のように提案しました。少量の晩酌はOK、カップ麺は今まで全部飲んでいたスープは残し麵だけにすること、可能なら2日に1回にすること。生来まじめなH男さんはそれを守り、今まで毎月のようにあった入院が、半年たった現在も家庭で生活できています。

 心不全や高血圧と塩分摂取量は不可分な関係にあります。塩分を多く摂取すると体の中で通常の塩分濃度に薄めようと水分を要求します。水を飲むと血液を始めとした体液量が増し、それを循環させるため血圧を上げ、心臓にも負担がかかります。力の落ちている心臓は対応しきれず肺を始めとした各部に血液がよどみ心不全を発症します。

 心不全や高血圧症の食塩摂取量は一日6g以下が推奨されています。ラーメンやカップ麺、うどんなどスープも含め全部食べると食塩を5~7g摂取してしまいます。麺には食塩は0.4~2.0gしかなく、大半はスープに含まれています。心臓専門医としてはラーメンやうどんは食さないことが一番ですが、食べてもスープは残すこと、回数を減らすことを忠告します。

 

 

 先日、何気なくツイッターを見ていたら、各分野の専門医が一般の方がしてはいけないことやなるべく避けることが望ましい事柄が種々忠告されていました。

〇整形外科医:若者はスノーボードをしない(両足を拘束されるスノーボード、両手を離した瞬間どうなるか)
      :高齢者は脚立に乗らない ← 骨折を生じやすいことはしない

〇耳鼻科医:ヘッドフォン大音量にしない ← 音響外傷による難聴予防
     :こまめに耳かきしない(楊枝での耳かきなどもっての外) ← 外耳炎を防ぐ

〇消化器内科医:バリウム飲まない、内視鏡をすすめる ← 診断能力に雲泥の差がある

〇内視鏡医:生魚、生サーモンは食べない ← アニサキス症にならないために

〇薬剤師:抗生物質は飲みきる ← 自己中断は病気の再燃や薬の効かない細菌を生む

 

ドクター日浅の健康雑話 過去の記事はこちら

其の一 飲酒後コタツで一瞬気を失った 

其の二 お尻から太ももの後ろがしびれるので整形外科を受診した

其の三 心臓専門医の急性心筋梗塞体験記(上)

其の四 心臓専門医の急性心筋梗塞体験記(中)

其の五 心臓専門医の急性心筋梗塞体験記(下)

其の六 患者さんの感謝の言葉が一番うれしい

其の七 心臓も”気絶する”

其の八 川柳にみる診察室の風景

其の九 中年女性の狭心症は深夜に生じる

其の十 私の診察室から(1)

其の十一 冬のお風呂で“おぼれ死”かけた

其の十二 私の診察室から(2)