ドクター日浅の”健康雑話” 其の九
NEWS
ドクター日浅の”健康雑話” 其の九
2022.10.14
海南病院のホームページを訪ねてくださりありがとうございます。
私が海南病院に勤務するようになって3年近く経ちます。月曜日の外来にはたくさんの方が受診してくださるようになり、医者冥利に尽きると感謝しています。
これからも海陽町民を始めとした南部地域の方々に少しでも健康面でお役に立てればと願っています。その一環として、日々の診療の中で経験したことや感じたことを雑談的に書いてみたいと思います。気楽に読んで頂ければ幸いです。
54歳のA子さんはここ一月の間睡眠不足が続いています。というのも2~3日に1回くらいの頻度で胸苦しくて目が覚めるからです。それが決まって深夜の2時から3時くらいに生じます。胸全体が重苦しく時には左の奥歯まで鈍痛を感じます。短い時は10分位、長くとも30分位するといつの間にか寝ています。朝起きると何ともなく昨晩のことは夢だったのかと思うくらいです。勤めに出ていますが仕事には何の支障もありません。ただ睡眠不足か昼間居眠りをすることがありました。しかし、昨晩は今までとは様子が異なりました。いつものように2時過ぎに胸が重苦しくて覚醒しました。いつものことだと様子を見ていましたが、息苦しさが加わり冷汗も出てきました。30分位で少し楽になりましたが、そのうちまた苦しさが増してきました。苦しくなったり楽になったの繰り返しが2~3度続き明け方になってやっと眠れました。ただ事ではないと思い病院を受診しました。
私はA子さんの話を聞くと、直ちに夜間狭心症(冠攣縮性狭心症)と診断しました。それ程A子さんの症状はこの病気に典型的なものでした。この病気は突然死する場合もありA子さんもこれ以上受診が遅ければその可能性があったと思います。
狭心症は心臓の筋肉(心筋)に栄養を送っている冠動脈の血流が悪くなり心筋が痺れる(酸素不足;虚血)を生じる病気です。原因は2つあります(図)。1つはコレステロールの塊が血液の通り道を狭くするために生じる労作性狭心症、他のものは血管のある部分が一時的に異常に収縮(攣縮;スパスム)を生じる冠攣縮性狭心症です。前者は主として昼間の運動時に生じ、後者は夜間から早朝の安静時に多い特徴があります。冠攣縮性狭心症は原因が未だすべて解明されていませんが、自律神経の異常、女性ホルモンの低下等が深く関与しています。このため閉経前後(40歳~60歳)の女性に多いこともこの病気の大きな特徴です。
A子さんはアセチルコリン負荷試験という精密検査で病気を確定し(図)、Ca拮抗薬の就寝前の服薬とニトロペンの常時携帯で発作は全く消失し、健康な生活を送っています。