ドクター日浅の”健康雑話” 其の十一
NEWS
ドクター日浅の”健康雑話” 其の十一
2022.12.15
海南病院のホームページを訪ねてくださりありがとうございます。
私が海南病院に勤務するようになって4年を迎えようとしています。月曜日の外来にはたくさんの方が受診してくださるようになり、医者冥利に尽きると感謝しています。
これからも海陽町民をはじめ、南部地域の方々に少しでも健康面でお役に立てればと願っています。その一環として、日々の診療の中で経験したとや感じたことを雑談的に書いてみたいと思います。気楽に読んで頂ければ幸いです。
73歳のF男さんは去年冬、九死に一生を得た恐ろしい経験をしました。コロナ流行も一段落したと思えた昨年末、気の置けない数人の友達と居酒屋でささやかな忘年会を行いました。楽しいひと時を過ごし、ほろ酔い気分で帰宅しました。風呂好きのF男さんはそのまま風呂場に直行しました。いつもより入浴時間が長いことが気になっていた息子さんが物が倒れるような大きな音にびっくりし浴室に駆けつけると、浴槽の縁に額を打ち、血を流し湯船にうつ伏せになっているF男さんを発見しました。救急車で病院に運ばれたときは意識も戻り、湯水を少し飲んでいたことに気づきました。
令和元年の厚労省研究班の調査では、脳卒中などの病気なども含めた入浴中の死亡数は1万9千人以上と推計されています。その中でも毎年約5千人が浴槽の中で“おぼれ死”(溺死)しています。そのうち90%以上が65歳以上の高齢者です。とくに冬季の入浴中に頻発しています。日本人の入浴好きは有名ですが、浴槽の中での溺死も他の国の十倍以上といわれています。
原因については、まず浴槽の中で体が温まると血管が拡がり血圧が下がりやすい状況が生まれます。急に立ち上がることにより血圧は急激に下がり、“脳貧血”を生じ、意識がなくなり、顔が湯の中に没し溺死します。寒い浴室で、熱いお湯に首まで浸かり、長時間入浴することは最も危険なことです。とくに今までに入浴中にフラーとする軽いめまいの経験がある方は要注意です。
上記のF男さんも家人よりも熱めの湯が好きで首まで深く湯船につからなければ“風呂に入った気がしない”といいます。時折、風呂から上がる時にフラーとすることがありましたが気に留めていませんでした。事故のあった日も熱い湯に長時間首まで浸かり急に立ち上がった途端に意識がなくなりました。
消費者庁では安全に入浴するために次の5点の注意を呼びかけています。
1)入浴前に脱衣所や浴室を温める
2)湯の温度は41度以下、湯に浸かる時間は10分までを目安とする
3)浴槽から急に立ち上がらない
4)アルコールが抜けるまで、また食後すぐの入浴は控える
5)入浴前に同居者に一声かけ、いつもより入浴時間が長い時は見回ってもらう
ドクター日浅の健康雑話 過去の記事はこちら