ドクター日浅の“健康雑話” 其の十
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ドクター日浅の“健康雑話” 其の十
2022.11.15
海南病院のホームページを訪ねてくださりありがとうございます。
私が海南病院に勤務するようになって3年近く経ちます。月曜日の外来にはたくさんの方が受診してくださるようになり、医者冥利に尽きると感謝しています。
これからも海陽町民を始めとした南部地域の方々に少しでも健康面でお役に立てればと願っています。その一環として、日々の診療の中で経験したとや感じたことを雑談的に書いてみたいと思います。気楽に読んで頂ければ幸いです。
過日、私の外来を半年に1度程度通ってきている80歳代の女性が受診されました。余り元気がありません。「〇〇さん、お元気でしたか?」、「先生、足や腕のあちこち痛うて入院しとった」、「何という病気でしたか?」、「診療所の先生から横文字の難しい病名を言われたがよう分からん。そこに何と書いてあるで」。
紹介の先生から戴いた情報提供書を見ると、「PMRと思われる筋肉痛で入院していた」と記載されています。PMR?、PMR?私の頭は混乱してしまいました。「〇〇さん、ごめんよ。勉強不足で。私もよう分からん」、「先生も分からんことがあるんじゃなあ」。診療が終わって急いでネットで検索しました。PMR:Polymyalgia rheumatica;リウマチ性多発性筋痛症。フルスペルや日本語で書いていてくれたら少しは満足な説明をしてあげられたのにと自分の不勉強を棚に上げて恨めしく思いました。
患者さんの意思で急変した場合、積極的な蘇生を希望されず静かに看取って欲しいという方に診療録のよく分かる場所にDNRと記載されているのをみかけます。私は以前DNRの意味がわかりませんでした。DNR:do not resuscitate;蘇生するな。何のことかよく分からなく患者さんの意思に反することをしかねません。“蘇生不要”とするか、せめてDNA(蘇生不要)と付記すればと思います。
その他、エビデンス、イレウス、QOL、インフォームド・コンセント等は患者さんがそもそも言葉の意味を知らない場合が多いと感じます。肺水腫、炎症等は言葉は知っていても意味が理解できないことがあります。私は例えば「エビデンスのある治療法」と言わず「調査によって効果のあることが確かめられている治療法」、イレウスは「腸閉塞」、QOLは「生きがいや満足度」、インフォームド・コンセントは「十分な説明と同意」と平易な言葉で言い換えて患者さんに話しています。
言葉や用語は誰にもよく通じて初めてその役割が果たせるものです。私の診療室では患者さんのレベルに合わせて話すように心掛けています。高齢者の方には略語や専門用語は原則として使いません。若い方には少し難解な言葉でも専門用語が的確な場合は使用することがあります。診療録や紹介状には原則として日本語で記載しますが、稀には略語を使うこともあります。その場合は必ずフルスペルを付記します。患者さんや家族の方はもちろん医療従事者にも自分の言葉の意味が正確に通じるように心掛けています。
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其の二 お尻から太ももの後ろがしびれるので整形外科を受診した